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ミュージシャン・俳優の石橋凌がニューアルバム『オーライラ』を2022年8月31日に発売した。
1970年代後期にデビューして以来、日本の音楽シーンに数々の伝説を残し、俳優業と並行して現在まで活動を続けてきた石橋。前作から5年振りのアルバムとなる今作は、梅津和時(Sax)、藤井一彦(Gt)、伊東ミキオ(Key)、渡辺圭一(Ba)、太田惠資(Vn)、サンコンJr.(Dr)、江藤良人(Dr)といった腕利きのミュージシャンと共に創り上げた、ソロ活動の開始と共に掲げてきた“ネオレトロミュージック”の完成系となる作品だ。同時に、その表現の根底に流れるスピリットが、今なお彼の活動を支え続けていることが強く感じられる1枚となっている。
コロナ禍の日常から生まれた楽曲のことから「ロックという言葉を使うのはやめた」というミュージシャンとしての現在の心境まで、たっぷりと語ってもらった。
略)
―確かに、バンド時代からソロになってからも一貫して社会的なテーマを歌っていますね。
石橋:当時から僕が1つのテーマにしている反戦歌を歌っていると、事務所の人とか周りの人に「そんな絵空事のような歌は日本ではウケないし、売れないよ」って言われたんです。でも1980年代から現在まで、世界中のどこかで戦火が上がってるんですよね。それで今回のウクライナのことがあるわけじゃないですか? それでもまだ俺に「絵空事だ」って言えるのかって思うんですよ。当時、「じゃあ何を歌えばいいんですか?」って聞いたら、「男女のラブソングだよ」って言われて、「人のことを思うから反戦歌を歌うのであって、僕は究極のラブソングだと思いますよ」って言ったんです。そういう問題意識というのは、幼少の頃に聴いたジョン・レノンやボブ・ディランから学んだことなんです。1枚のアルバムの中に、男女のラブソング、友だちの歌、家族の歌、仕事の歌、世の中で起きている理不尽なこと、戦争の歌まで1枚に共存していた。自分はプロのミュージシャンになったら、それを日本語で歌っていきたいと思っていたんです。ところがいきなり「歌詞に政治的なこと、社会的なことをひと言も入れるな」って言われた。僕は来年でデビュー45周年になるんですけど、自分としてはロックミュージックの本質を表現してきたと思っているんです。ところがそうすると「メッセージバンド、社会派バンド」として扱われて、それはイコール日本では売れないバンドなんですよ。本当はそういう歌ばかりじゃなくて、親父のことを歌ったり、男女のラブソングもある。その延長戦上に反戦歌もあるんですけど、それは歌っちゃいけないと言われるんですよ。
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/38577
続)