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また、相談を受けた外国人技能実習機構の職員は次のように発言している。
監理団体にさっきちょっと電話した所ですね、(会社)に戻るための話し合いをする、条件としてユニオン(注:加入する労働組合・仙台けやきユニオンのこと)を脱退するって事を言われました。
今すぐには決められないと思うんだけど、OTITが問題解決をサポートして、もしそれでも解決できなかったら、またユニオンにお願いするという方向もあると思います
(なお、実習生と外国人技能実習機構のやり取りは実習生たちによって録音されている)
復職の代わりに労働組合の脱退を求める会社側の行為は、労働組合法に定める「不当労働行為」に該当する違法行為である(労働組合法第7条)。
しかし、外国人技能実習機構は、会社や監理団体の行為を是正させるどころか、むしろ労働組合の脱退を促すともとれる発言を、技能実習生に対して行っていた。
さらに、会社に謝罪をし、3人が支援を求めて加入した仙台けやきユニオンを脱退すれば復職の可能性があるとも技能実習生らに伝えたという。これがそのメールの画像だ。
■繰り返される「支援機関」による不当な行為
今回の事件では、外国人技能実習機構が、企業や監理団体の側に立ち、さらには違法な労働組合の脱退要求をも代弁している。
これはきわめて深刻な人権侵害への「加担行為」である。同様のケースが全国にどれだけあるのかはわからないが、技能実習生制度そのものに大きな欠陥が含まれていることを示唆しているといえよう。
実は、今回のような事件は、技能実習制度の下ではたびたび起きている。例えば、神奈川県では、
「外国人技能実習制度の総合支援機関として、「受入れ」「手続き」「送出し」「人材育成」「実習生保護」の5つの支援事業」を行うとされている公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)が、
監理団体とともに、技能実習生が所属する労働組合の組合員を脱退させようとしたとして、労働委員会で争われている
(なお、この事件では、労働組合側の申し立てが棄却されているが、その理由は同機構は労働組合法第7条第3号の「使用者」に当たらないという判断からだ。
つまり、企業の不当労働行為に加担しているものの、機構自体は労組法が適用される対象ではないということである)。
■技能実習制度の廃止を求めて、権利行使を支えるZ世代
技能実習生は、転職の制限があり、認められる場合は違法行為の発生などの例外的な場合だけだ。
また、技能実習生らは出身国にある送り出し機関から多額の借金をしていることが多く、債務で縛り付けられている状態は野放しとなっている。
そのような中で逃げ出そうものなら、「失踪」となり、犯罪者として警察や入国管理局に常におびえながら暮らさなければならない。
そうなりたくなければ、黙って働くしかない。このような状態は、「現代奴隷制」であると多方面から批判され、廃止を求める意見が根強い。
今回の事件で示されたように、制度が適切に運用されることを担保する「最後の砦」とされてきた外国人技能実習機構が技能実習生の権利を保障することができないならば、
実習生制度を廃止して、労働者として当然の権利である転職の自由を認めるべきだという論拠がさらに強まることになる。
特に、最近目立つのは若者たちからの批判だ。Z世代の若者たちがつくる「技能実習制度廃止プロジェクト」は、不当解雇された後の生活支援のために食糧支援を行う、
失業手当の受給のためにハローワークに同行し手続きを手伝うなど、権利行使の基盤づくりを支えるために日々活動しているほか、団体交渉や申し入れに一緒に出て、実習生らの権利主張を支えている。
彼らが目指すのは、現場の支援活動から事実を明らかにし、制度を改善させることだという。
権利行使を妨害されている技能実習生にアウトリーチし、相談を集め、権利行使を支え、問題を可視化していこうと日々奮闘しているのだ。
私たちはかれらが示す現場の「事実」に向き合い、制度の是正をしていかなければならいのではないだろうか。