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ひざ丈好みの昭恵さん、夫が好きな伝統を内側から否定?
「無難さ」とはほど遠く、好きな服を自由に着こなす異色のファーストレディー安倍昭恵さん。その姿は、安倍首相の好きな「伝統的家族観」とは、矛盾するようにも感じられます。コラムニストの矢部万紀子さんが考えます。
1961年生まれ。朝日新聞経済部、AERA、週刊朝日などを経てフリー。著書に「雅子さまの笑顔」など。
「それでいいの?」 同じ首相夫人の経験者だからこそ
反原発や大麻に関心を示したり、居酒屋経営に乗り出したりする昭恵さんは、「空気を読む」とか「自重する」といった態度からはほど遠いファーストレディーだった、とみられています。
とっぴな行動だけでなく、私には、彼女の洋服選び、そのファッションスタイルも、彼女が「こうであらねばならぬ」という発想を一切持たない自由人であることを、見事に語っていると思えます。
改元儀式の服装 首相の放任を直感
彼女の服装は「無難」ではありません。少なくとも「日本の働く女性の無難」からははずれています。
まず、ワンピース好き。日本の会社でワンピース姿で働く女性はすごく少ないし、国会議員や官僚にもあまり見ないでしょう。ジャケット姿がふつうです。そのワンピースも、凝ったデザインの個性的なものが多い。
お気に入りのスカート丈はひざ丈かひざ上で、ひざが見える丈を好んで着るのも特徴です。1962年生まれ、58歳の年齢で、自分のスタイルの良さを自覚していないと選びません。「首相夫人がひざ小僧を出すなんて」と感じた人もきっといたと思います。
私が、彼女を「やるのぉー」と思うのは、育ちが良いお金持ちの50代以上の女性が選びがちな、シャネルとかエルメスといった、わかりやすい有名ブランドにいかないことです。
今回、彼女の写真を改めて数多く見ていて、「白ブラウスに黒いひざ丈スカート」というカッコいい着こなしを発見しました。ブラウスは2005年にスタートした日本の「まとふ」という、男女2人のデザイナーのブランドである、とファッション専門紙が指摘していました。
こうした「攻めの姿勢」が論議を呼んだのが、昨年10月、天皇が即位を宣言する「即位礼正殿(せいでん)の儀」の時のワンピースです。白でひざ丈、凝った袖のデザインという彼女の好みですが、夫が国民を代表して「万歳三唱」をする古式ゆかしい皇室行事には、なかなか選びにくい服です。ネットではけっこうなバッシングを浴びていました。
このとき、晋三さんは昭恵さんを「放任」しているのだな、と思いました。「無難な服にしたら」と求めることはせず、彼女のおしゃれ欲は尊重している。逆に晋三さんはスーツ姿だけでも、おしゃれでないのがわかる。この夫婦からは相手の趣味を尊重する、今どきの夫婦の、対等な感覚が感じられます。
だから、不思議なのです。妻がひざ小僧を出し、派手な袖のデザインの服を着るのを認めている夫が、なぜ政治の場では「伝統的家族観」に縛られ、選択的夫婦別姓でさえ嫌がるのか。だって昭恵さんは、そんな伝統を内側から否定していると思うからです。