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山梨)わが子へ性教育どうすれば 親も逃げず向き合って
性について話すことは恥ずかしい。でも、性犯罪の加害者、被害者にならないために、子どもたちに正しい知識を伝えたい。そんな思いをもつ保護者に向けて、山梨県内である講座が開かれている。
「とにかく明るい性教育 パンツの教室協会」(東京)主催の講座だ。体験会が2月、山梨市であり、小学生以下の子をもつ母親ら女性8人が集まった。
「『赤ちゃんってどうやってできるの?』『セックスって何?』と聞かれたらどう答えますか」
インストラクターの天野有紀さん(43)が問いかける。黙り込む参加者を前に、天野さんは続けた。
「困った顔をしたり逃げたりすると、子どもは『お母さんに聞いちゃいけないんだ』『セックスは悪いことなんだ』と思う。素直な疑問を受け止め、大好きな人とのセックスで赤ちゃんが生まれることは素敵なことだと答えてあげて」
親から教えてもらえないと、子どもは「スマホですぐ調べる」と天野さん。すると、スマートフォンに簡単な言葉を入力し、検索するよう指示した。
戸惑いながらもスマホを操作する母親たち。動画が見られるサイトに簡単につながり、暴力的な場面も目に飛び込んできた。「目を背けないで。こういうものが、子どもたちの身近にあることをまず理解してください」
山梨市の女性(41)は5歳と1歳の男の子をもつ。長男が下半身を見せてくることが心配で受講した。
講座では、「水着ゾーン」は見せたり、触ったり触られたりしてはいけないと教える。相手に嫌な気持ちを与えるからだ。「女の子の体のことも理解し、優しく接してあげられる子になってほしい」と話す。
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天野さんは10歳、8歳の娘と6歳の息子の3児の母。不妊治療を経て授かったが、治療のことを親には言えなかった。
「子どもには性教育をきちんとして、なんでも相談してほしい」。そう思い、パンツの教室協会の講座を受講。広く知ってほしいとインストラクターになった。
11年間、小学校教諭をしていた。性教育の授業を振り返り、「あれでは不十分だった」と言い切る。
指導要領を見ると、小学校は「思春期の体の変化などについて理解ができるようにする」、中学校は「妊娠の経過は取り扱わないものとする」と明記されている。性交を教えない「はどめ規定」だという。
教諭のころ、性について授業をすると教室がざわついた。「卑猥(ひわい)」「エッチ」といったイメージがあるからだろう。性教育について「幼いときから段階的に教える必要がある」と実感している。
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パンツの教室協会は2018年に設立され、インストラクターは全国に約200人。県内には天野さんら5人がいて、約150回の講座を開き、延べ約700人が受講してきた。
協会代表ののじまなみさん(39)は「性犯罪から子どもを守るには性教育しかない」と信じている。警察庁によると、全国の警察に寄せられる子どもの性被害は1日3件ほどだが、「誰にも言えない被害もあり、その10〜100倍はあるのでは」と危惧する。
県内でも性犯罪は起きている。昨年5月に中学生の義理の娘にわいせつな行為をしたとされる男が、懲役3年の実刑判決を受け、控訴している。昨年3月には公衆浴場で男児が男に下半身などを触られ、男は強制わいせつ罪で懲役2年執行猶予4年の判決を受けた。
思春期に入る前の3〜10歳ごろに性の知識を教え、親子で話し合える関係を築くことをめざす。
のじまさんは「1回の授業で理解は困難。親が習慣的に教えることで、子どもが正しい知識を蓄積でき、結果的に子どもを守ることにつながる」と訴える。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、いまはオンラインで講座を開いている。