【ヒットの秘密 ジブリの大博覧会】(上)女性主人公 理想像は監督の母親
「となりのトトロ」のサツキ、「千と千尋の神隠し」の千尋、風の谷のナウシカ−。
ジブリ作品に登場する女性主人公には共通点がある。みんな「けなげでいちず」なのだ。
サツキは病気の母に代わって父親と妹の世話をし、千尋は豚に変わった両親を助けるために異界の風呂屋で働く。
愚痴や泣き言は言わず、いつも前向きで健康的だ。そんな女性像は一体どこから生まれたのか。
「あれは宮崎駿監督が抱く理想の女性像。モデルは母親だと思います」。
スタジオジブリの取締役制作業務部長、野中晋輔さんがそう謎解きをしてくれた。
母親は、次男の宮崎監督を含めて4人兄弟を育てた。病気を患っていたが、明るくしっかりした女性だったという。
宮崎監督は1941年生まれ。終戦前後の母親の姿が投影されているのなら、女性主人公たちがけなげに頑張るのも納得できる。
その母親に最も近いのは「天空の城ラピュタ」の豪快な空の女海賊(空賊)ドーラだという。ドーラは女手一つで息子3人を育てた設定になっている。
登場人物にはもう一つ共通点がある。連
続殺人犯やテロリストのような絶対的な悪人がいないのだ。
その点について、宮崎監督は解剖学者の養老孟司さんとの対談でこう語っている。
「殺しても惜しくない人間を映画に用意しておけば、いくらでも殺せるわけです。
それをやったらおしまいだと思うから、なるべくいい部分で人間たちを出そうと自分に課したんです」
宮崎作品の悪人には、どこか人間的な魅力がある。
それは、悪人をどんどん殺して、見る人を「人間嫌い」にしたくないから。
けなげな主人公と憎めない悪人たち。それが「単純に楽しい、元気になる映画」(野中さん)を作る秘訣(ひけつ)の一つなのだ。
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/culture/article/497501/