携帯電話のバッテリーやエコカーの駆動電源に用いるため、リチウムイオン充電池の研究は今でも盛んに行われています。
特に研究者から注目されているのが、安全性と生産コストに優れた「全固体リチウムバッテリー」です。
ミシガン大学が、従来のリチウムイオンバッテリーの倍の性能を持ち、劣化や発火する心配もないという、新しい全固体リチウムイオン電池を開発したと報告しています。
1980年代に発明された、金属リチウムと液体電解質を使用した「金属リチウムバッテリー」は新しい技術として大きな期待を集め、NTTが発売したショルダー型携帯電話のバッテリーに採用されることで市場に登場しました。
しかし、電極表面にデンドライトと呼ばれるリチウムの塊が析出し、最終的に電池のショートによって発火する可能性がありました。
当時はこの問題を解決することができず、電極に金属リチウムを使用した充電池はやがて使われなくなってしまいました。
1991年にソニー・エナジー・テックが販売したリチウムイオンバッテリーは、電極に使うグラファイト(黒鉛)がリチウムイオンを吸収することで
リチウムデンドライトの析出を防止するため、それまでの金属リチウムバッテリーに比べて安定していました。
そのため、今に至るまで充電式バッテリーの主流はリチウムイオンバッテリーとなっています。
ただし、リチウムイオンバッテリーは、金属リチウムバッテリーよりも充電速度が圧倒的に速いものの、比容量・エネルギー密度は大幅に負けてしまいます。
また、リチウムイオンバッテリーは充電を繰り返すことで少しずつ劣化が起きてしまう上に、発火の危険性も依然としてありました。
ミシガン大学の機械工学教授であるジェフ・サカモト氏は、金属リチウムバッテリーがデンドライトの析出によってショートしてしまうという欠点を解決するために、
電極に用いる金属リチウムの表面をセラミック製の固体電解質でコーティングすることで物理的に安定させるというアイデアを思いつきました。
度重なる実験の末、高温でコーティングしたセラミック電解質によって、デンドライトが析出しないような金属リチウム電極の開発に成功しました。
研究チームによると、この新しい電極を用いた全固体リチウムバッテリーは、リチウムイオンバッテリーとほぼ同じ速度で充電することができる上に、
リチウムイオンバッテリーに見られるようなバッテリーの劣化が見られず、リチウムイオンバッテリーの倍以上の比容量・エネルギー密度が期待できます。
ミシガン大学の研究員であるネイザン・テイラー氏は
「私たちは新しい金属リチウムバッテリーを22日間使い続ける実験を行いましたが、バッテリーの電極は一切劣化していませんでした。
これほど長い間うまくいっている全固体電池は見たことがありません」と語っています。
セラミックを利用した全固体リチウムバッテリーが実用化されれば、現行のリチウムイオンバッテリーよりも小型で高出力かつ安定した充電池となり、携帯電話やノートPCだけではなく自動車(EV)への応用も期待できます。
セラミック電解質による電極の性能を確認した研究チームは次の段階として、電池比容量の目標を満たすための薄いセラミック電解質層の製造・研究を開始しているとのことです。
http://www.greencarcongress.com/2018/08/20180816-umich.html