「道化」を演じ続ける本田圭佑の男気が泣けてくる
ペロリと出した舌には、どのような意味が込められていたのだろうか。
運を持っている自分をアピールしたかったのか。
あるいは、散々のように浴びせられてきた批判への、
ちょっとした意趣返しの思いも込められていたのだろうか。
自身と香川真司(独、ボルシア・ドルトムント)がベンチに座ったまま、
ヴァヒド・ハリルホジッチ監督に率いられた日本代表が昨年8月のオーストラリア代表戦で快勝。
6大会連続6度目のワールドカップ出場を決めた直後には、本田はこんな言葉を残した。
「一番の収穫は、僕や(香川)真司が出なくても勝てたということ。当然ながら僕や真司はそこに危機感を覚えるわけですよ。
いままでだと、統計的に見ても僕や真司が出なければ、よくない試合や勝てない試合が多かった。
でも、実際に勝ってしまった。僕らはもう必要ないんじゃないかと当然ながら言われるわけですけど、
それがいいことやと思っています。それが次につながりますし、
逆に僕らとしてはまたコンディションを上げていかなければいけないわけですから」
メディアを介して伝えられれば、火に油を注ぐかのごとく、批判の嵐がさらに激しくなりかねない。
そうした状況を承知のうえで、本田はエッジの効いた言葉を発し続ける。
その意図はどこにあるのか。
ひとつは逆風を前へ進むためのエネルギーに変えてきた、本田の生きざまに求めることができる。
「追い込まれるほど力を発揮する。だから『本田圭佑』なんです」
前出のNHK総合の番組内ではこう言い放った本田は、
ACミラン(伊)に所属していたときに訪れた、ミラノ市内の日本人学校で子どもたちにビッグマウスの裏側を明かしている。
「自分が弱い人間だということを知っているから、僕は逃げ道を遮断しようとしたんですね」
自分自身に最大級のプレッシャーをかけることで、結果を残さなければいけない状況を進んで作り出す。
メディアに対して虚勢を張り続ける、不器用にも映るサッカー人生の軌跡には、セネガル戦で決めた歴史的なゴールが鮮明に刻まれた。
その瞬間に批判を称賛の嵐に変えて見せた。
舌を出して喜ぶ本田圭佑=2018年6月、エカテリンブルク
もうひとつはチームのなかでは、対照的な役割を演じていることだ。
陽気なキャラクターでムードメーカーを自負するDF槙野智章(浦和レッズ)が
ファンやサポーター、そしてメディアからはうかがい知れない、ホテル内でのこんな一幕を明かしてくれたことがある。
「食事会場における笑い声や話し声、あるいは話し方で自然と中心にいるのは間違いなく本田選手だと思います。
僕は本田選手に引っついて、わちゃわちゃしていますけど」
もしかすると、笑顔の中心となり、時にはいじられ役にもなるという本田が本当の素顔なのかもしれない。
屈強なメンタルの持ち主でもある本田が対外的な批判を一身に浴びて、一致団結すべき西野ジャパンの防波堤をなしてきた―。
そう見るのはちょっと考えすぎだろうか。
いずれにしても、本田自身は3度目となるロシア大会を、最後のワールドカップと位置づけている。
スーパーサブにしてムードメーカーという新境地で、どんな状況でもブレない芯の強さを触媒としながらいぶし銀の存在感を放ち
西野ジャパンを縁の下から支えている。
https://ironna.jp/article/10054?p=3