
<北朝鮮の一部のエリートたちはフェイスブックやインスタグラムを使いこなし、自由にネットサーフィンに興じている>
インターネットが厳しく制限される北朝鮮について、興味深い報告が飛び込んできた。
北朝鮮のごくわずかな高官たちは、インターネットでソーシャルメディアのチェックからゲームまで、自由に行っているという。
リサーチ会社インシクト・グループの調査で、インターネットの専門家が3カ月にわたって、孤立しているはずの北朝鮮のネット利用を監視した。
ほとんどのケースで、保護されていない状態だったこともあり、監視は順調に進んだ。そして、これまでにない、北朝鮮エリートのネット使用の実態が浮き彫りになった。
一握りのエリートはネットも自由
今回の報告によれば、北朝鮮の最高指導者を含む最高層は、外部へのアクセスに一般的な制限はないようだ。
さらに、彼らのインターネット上での動きは、その他の国のユーザーと非常に似ていることがわかる。
ユーザーはフェイスブックやインスタグラムといったSNSを日常的にチェックし、ニュースを読み、アマゾンを覗くことも忘れない。ポルノ閲覧も。
特に、ゲームやコンテンツのストリーミングが多く、使用全体の65%を占めていた。一番人気のゲームは、「World of Tanks(ワールド・オブ・タンクス、略称: WoT)」だ。
これらへのアクセスは、中国発の動画共有サイト「Youku(优酷)」、iTunes、P2Pファイル共有ソフト「BitTorrent」を利用していた。
一般市民は3G
北朝鮮では、一般市民のほとんどがインターネットにアクセスできないという報告がある。
一般的に主流のモバイル機器は、音声、テキストメッセージ、画像や動画の送受信など基本的な3Gサービスだけ。
ネットワークはもちろん、北朝鮮国内プロバイダの「Koryolink(コリョリンク)」を通じてのみ、動作する。
大学生や科学者、一部の政府関係者などは大学やインターネットカフェにおいてあるコンピュータを使って、
国営のイントラネットにアクセスできる者もいるが、一般市民が「ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)」に直接アクセスするのは難しい状況だ。
IT関連ニュースサイト「SCメディア」によると、北朝鮮には400万台の携帯電話が存在すると見られる。 ちなみに人口は2016年時点で2537万人(世界銀行)だから、6.3人に1人が携帯電話を持っていることになる。
取り締まり強化で粛清も
海外コンテンツの閲覧はこれまでも厳しく制限されてきた。26日の韓国紙・中央日報によると北朝鮮は近ごろ、中国・北京の北朝鮮大使館で徹底的な検閲を実施した。
そもそもの発端は6月末、在中北朝鮮大使館所属の要職に就く幹部が、韓国ドラマを見ていたことが摘発されたこと。事態を重く見た労働党指導部は、ピョンヤンから特別検閲団を送り込み、
パソコンやCDのほか、外付けハードディスクやUSB、特に携帯電話を隅々まで調べ上げたという。
一般市民の娯楽への切実な思いを代弁した人物がいる。2016年に韓国へ亡命した太永浩(テ・ヨンホ)駐英北朝鮮公使は昨年12月、韓国の国会情報委員会の懇親会の場でこう述べた。
「(北朝鮮国民は)昼間は金正恩万歳と叫ぶが、夜は布団をかぶって韓国ドラマを見て憧れている」。娯楽を求める思いに、階級は関係ないはずだ。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/07/post-8072.php