最近は私もゲームライターとして多少は認知されてきたのか、「実は自分もライターになりたいんです」なんて相談をもらうようになった。一件くらいなら「まあ、聞く相手を間違えたのだろう」と思いつつも返事ができるわけだ。
しかしながら同じような相談を別人から複数回もらうようになると、さすがに腰を上げてきちんと書いたほうがいいかもしれないと思うようになる。そしてもはや隠さずに言おう。「ゲームライターになろうとするな」と。
■とにもかくにもゲームライターは“割に合わない”
現在筆者はフリーランスのゲームライターとして働いているが、この仕事を始める前に何人かに相談をした。結果、「ゲームライターにならないほうがいい」と答えてくれた人がふたり、そして「ゲームライターには簡単になれる、仕事も紹介する」と言った人がひとりとなった。話を聞いた限りでは前者の論理のほうが圧倒的に正しいと思ったし、今でもそう思っている。
さて、そもそもゲームライターとはどんな仕事をしているのか。各ゲームメーカーが配布するプレスリリースをニュース記事にしたり、おすすめのゲームを紹介したり、体験会に参加してレポートを書いたり、あるいは関連イベントの取材を行うなんてのもそうだろう。クリエイターにインタビューしたり、各ライターが考えた独自の特集記事を書いたり、紙の仕事であればファンブックや攻略本の制作も該当する。結局のところ、ゲームにまつわる文章を書くと考えてもらえばいいだろう。
ゲームライターというと“ゲームを楽しく遊んでいるうえにお金までもらえる理想の職業”なんて思ってしまう人もいるらしいが、実際はこれほど割に合わない仕事はないといえる。IGN JAPANでは特に力を入れているゲームレビューを例として見てみよう。
このメディアにおいて、ゲームレビューの記事は3種類に分けることができる。本家IGNの翻訳記事、IGN JAPAN編集部に所属する人が書いた記事、そして外注のライターが書いたレビューとなる。
この3種類を使い分けているのはいくつかの理由があると思われる。たとえば、特定のライターがその作品やジャンルが好きでとても詳しいからという理由だったり、あるいはIGN本家のレビューが単純に立派なので新たに書き起こす必要がないこともあるだろう。そして、他には原稿料の問題というものがある。
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のレビューはIGN JAPAN編集部のクラベ・エスラ氏が、そして『ゼノブレイド2』のレビューは同じく編集部員の野口広志氏が担当している。もちろんこのふたりはレビューする作品に詳しいため書き手の資質としても申し分ないが、もうひとつ気になるポイントがある。これら作品の共通点は、しっかりやりこもうとすれば100時間以上かかってもおかしくないほど大ボリュームだということだ。
もし、これら作品のレビューを外注のライターに頼んだとしよう。時給が1000円だとしてプレイするのに100時間、記事の執筆は5時間程度でさっと終わらせるとする。すると、それだけでも原稿料は10万近く必要になるわけだが──。正直なところ、ゲームレビューの執筆に10万も払う媒体はまずほとんどないだろう(現状、あり得るとすれば、書き手が非常に特別な場合だ)。
クラベ氏および野口氏は確かにゲームライターだが、それ以前にそもそもIGN JAPAN編集部に属する人物である。となれば作業時間に見合う原稿料を……、などと考える必要はなく、単純に業務のひとつとして行えばいい。そして、そういった重たい仕事を外注に安い値段で振らず、編集部内で仕上げようというのは良心的であると捉えることもできる。
![【話題】「ゲームライターになろうとするな」(前編) ─ ゲームで遊んでお金をもらう難しさ[07/31] YouTube動画>2本 ->画像>6枚](https://sm.ign.com/ign_jp/screenshot/default/image3_r7ep.jpg)
https://jp.ign.com/ign-japan/26962/feature/
続く)