果南「我はー、ほら。アレだよ。何だっけ。こう……闇のなんとか。うん、そういうヤツ」
果南「どう?」
善子「は、はい?」
果南「……」
善子「……えっと」
果南「はぁ……ダメかー」シュン
善子「え、なに!? 私なにか悪いことした!?」
果南「ってことがあったんだけどさー。何がダメだったんだろ」
曜「うーん。おかしいところは無いと思うんだけど」
千歌「あれじゃない? 難しい言葉が足りないとか」
果南「あー、そっか。善子ちゃん、難しい言葉いっぱい知ってるからね」
曜「一年生ってみんな頭いいよね。ルビィちゃんも何だかんだお嬢様だし、花丸ちゃんなんかいつも小説読んでる」
果南「ね。花丸ちゃんヤバいよね。内浦からついに天才が生まれたよ」
千歌「果南ちゃんも何か本読んでみたら?」
果南「確かに本読んだら賢くなって一年生と話ができるかも」
果南「ねえ。ここに難しい本ある? 貸してよ」
千歌「いいよ、待っててね」トタトタ
千歌「――はい、名探偵コナン。5巻まで持ってきたよ」
曜「うわ、文字めちゃくちゃ多いやつだ……!?」
果南「すごいね、千歌。こんなの読んでるんだ……」
千歌「ふっふーん。歌詞担当は伊達じゃないのだ」
果南「よし、私も頑張ってみるよ。目指せ堕天!」
「「おー!」」
果南「だ、ダメだ目がしぱしぱする……」
千歌「ダメかー」
曜「私も読んでたら眠くなってきた……」
千歌「うーん。あ、コナンならアニメがあるよ」
果南「アニメ? それなら私でも楽しめそうだね」
曜「みんなで見ようよ。これで勉強すれば果南ちゃんも善子ちゃんと仲良くなれるって!」
千歌「じゃあ黒の組織のところだけ抜き出してみるね」
果南「ありがとう! よーし、難しい言葉いっぱい覚えるぞー!」
〜翌日〜
果南「綺麗じゃねーか……闇に舞い散る白い雪……。それを染める、えっと。何色だっけ?」
善子「あの。昨日から何なの……?」
果南「あっれー? これもダメ?」
善子「ダメって言うか」
善子「そもそも、奥の2人は何をやってるのよ」
曜「み、見つかった……!?」
千歌「マズいですぜ、ナンの姉貴! ここはズラかりやしょう!」
果南「え。花丸ちゃん借りてくるの?」
善子「本当に何なのあなたたち……」
果南「いやさ。ちょっと堕天してみようかなーって」
善子「コンビニ行くノリで堕天されても困るわよ」
千歌「淡島からコンビニ行こうと思ったら大変だよ?」
善子「え。あ、まあ、そうね。でもそういうことではなくて」
善子「と言うか……堕天したいの? 果南さん」
果南「うん。堕天したら善子ちゃんと仲良くなれるかなってさ」
曜「果南ちゃんはいいよー? すごく優秀なリトルデーモンになってくれるよ」
千歌「干物とか海藻とか持ってきてくれるよね」
果南「あ、善子ちゃんも干物いる?」
善子「いやに生活臭のあるリトルデーモンね……。あと、善子じゃなくてヨハネ」
善子「まぁでも、目的は分かったわ。仲良く、ね……私、よそよそしかった?」
果南「よそよそしいって言うか。何だろ、近づいたら逃げるよね?」
善子「あー……」
曜「え、善子ちゃん逃げるの? 何で?」
善子「そりゃ逃げるわよ。なんか腕広げてジリジリ距離詰めてくるんだもの」
千歌「あ、それハグの構えだ」
曜「善子ちゃん、あれから逃げられるの? すごいね」
千歌「ね。吸い込みハンパないもんね」
善子「果南さんは格ゲーの投げキャラか何か?」
果南「とにかくさ。私に堕天使のこと教えてくれない? 難しい言葉とか苦手だけど、頑張るよ」
善子「う、うーん」
善子(果南さん、かぁ……。どう見ても体育会系よね。ちょっと苦手なタイプ……)
善子(同じ体育会系でも曜さんは無邪気っていうか勝手にグイグイ来てくれるけど、この人は距離が掴みづらいし……でも)
善子(これはリトルデーモンを増やすまたとないチャンスよね。これを上手く足掛かりに出来れば)
善子「……くくく。自らこの深き闇に足を踏み入れようとは。人間とは愚かなものですね」
果南「おお、出た!」
善子「いいでしょう。光と訣別する覚悟があるのなら、あなたをヨハネのリトルデーモンと認めます……」
曜「リトルデーモンっていつも勝手に任命されてた気が」
千歌「わたしたち何号だっけ?」
善子「いいのよ、細かいことはっ! さあ、果南さん。共に参りましょう――闇を統べに!」
果南「おー!」
こうして。松浦果南の修行の日々が始まった!!
果南「ねえ善子ちゃん。この本の“闇の眷属”ってどういう意味?」
善子「闇の眷属は闇の眷属よ」
果南「……?」
善子「……友達って意味よ」
果南「あ、じゃあ私と善子ちゃんも闇の眷属だ。……でも、普通に友達って言えばよくない? 何でわざわざ?」
善子「か、」
善子「カッコいいから……///」
果南「?」
修行の内容は苛烈を極めた……
善子「今日は闇の波動を我が物とする訓練よ。真の悪魔は過去や未来を見通す力を持つわ」
果南「未来? あ、それなら私も言い当てられるものがあるよ」
善子「え、本当?」
果南「まず指でツボを突くでしょ? それから3つ数えると相手は――、」
善子「その技、世紀末になるまで使っちゃ駄目よ」
善子は弟子の成長速度に日々、戸惑っていた……
そして果南は、何も考えていなかった
果南「自分でも言葉遣い勉強してみたんだ。聞いてよ」
善子「へぇ……。いいでしょう。その呪文がこのヨハネに通用するか、試してみなさい」
果南「闇に飲まれよ!(お疲れ様です!)」
善子「方向は合ってるけどそれは違う!!」
そうして時は流れた――!
鞠莉「リピートアフターミー。Eternal Force Blizzard」
果南「えたーなる・ふぉーす・ぶりざーど!」
千歌「……何やってるの、あれ?」
善子「マリーが特別講師やりたいって。何の意味もないけど」
曜「また鞠莉ちゃんの遊びかぁ」
千歌「で、どうなの? 果南ちゃんの堕天修行は」
千歌「あ。今のは堕天使と修行の文字を重ねた――」
善子「どうって言われてもね……どうもこうも。あの人、恐ろしく堕天に向いてないわ」
曜「うん。何となくそんな気はしてた」
千歌「難しいこと言う前にまずハグ!だからね果南ちゃんは」
善子「シンプルで羨ましいわね……」
曜「善子ちゃんは割と繊細だもんね」
善子「頭いいって大変だよねぇ」
ようちか「「あはははは」」
善子(この人らマジなのかしら……)
>>20
ミス こっちが正解
千歌「頭いいって大変だよねぇ」
ようちか「「あはははは」」
善子(この人らマジなのかしら……) 果南「あいあむざぼーんおぶまいそーど! ……ねえ、鞠莉。これってどんな意味があるの?」
鞠莉「身体は剣で出来ている」
果南「??? えっと。どんな意味なの、それ……?」
曜「……それにしても熱心に勉強してるね」
千歌「だねー。まあ、果南ちゃんらしい、って言えばらしいかも。やってることは全然らしくないけど」
善子「そうなの?」
千歌「うん。果南ちゃんってね、基本的にテキトーで大雑把なんだけど」
善子「おおらかって言ってあげなさいよ、そういうのは」
千歌「あはは……。いや、悪い意味じゃなくてね、ホントに」
千歌「だからいつもは、さっき言ったみたいにとりあえずハグするの。でも今回はそうじゃない。そう出来ない」
曜「善子ちゃんはね、果南ちゃんが初めて出会った、ハグじゃあどうにもならない相手なんだよ」
曜「ハグしておけば何とかなる。でもハグさせてくれない。じゃあどうしたらいいのー?って。もう大混乱」
千歌「あれで人見知りで不器用だからねー」ケタケタ
曜「で、悩みに悩んで堕天することにした、ってわけ。堕天が何なのかさっぱり分かってないのにね」
善子「……あなただって分かってないでしょ」
曜「あはは、まぁね。ねえ、じゃあ、堕天ってどんなことなの?」
善子「ふん。そんな質問するような相手には教えないわよ」スタスタ
善子「――果南さん」
果南「ん、あぁ、善子ちゃん。今、鞠莉から教わってるんだけど難しいね、これ。英語苦手だからなぁ」
善子「英語が出来ても、まともな訳にならないわよ、それ」
果南「えっ」
鞠莉「〜〜♪」ピューピュー
果南「こ、こいつ分かってて……」
善子「マリーの悪ふざけなんか付き合ってもしょうがないわ。今から私が、堕天の神髄を教えてあげる」
果南「え、ホント!? いやぁ、助かるよ。堕天のことぜんぜん分かんなくてさぁ」
果南「何したらいいの? できる限り頑張ってみるよ」
善子「……ハグ」
果南「え?」
善子「ハグ、してもいいわよ……///」
果南「え。い、いいの……?」
善子「いいって言ってるでしょっ。しないならそれでいいけど」
果南「あ、するする! ハグしよう! ……えっと」
善子「……」
果南「……はは。なんか、改まっちゃうと照れ臭いね」
善子「するなら早くしなさいよ、帰るわよ!?」
果南「あぁ、待って待って。するから。――じゃあ」スッ
果南「――」ギュッ
善子「……っ///」
果南「あはは。善子ちゃん、やっぱり華奢だね。ちゃんと食べてる?」
善子「う、うっさい! もうおしまいよ、おしまいっ!」グイッ
果南「えー? もう?」
善子「もうなの! と言うか、私は善子じゃなくてヨハネ!」
果南「うーん、残念だけど仕方ないかぁ。またハグしようね、善子ちゃん」
善子「……はぁ。あー、もう。好きにしなさい……」
果南「うん、そうする」
果南「あれ。でも、堕天の神髄って何だったの? ハグ?」
善子「そんなわけないでしょ。……悪魔っていうのはね、誰かに気を遣ったりしないわ」
善子「やりたいようにやるし、らしくないことなんてしない。そこにどんな不幸や、不安があってもね」
善子「もし後悔することがあったって、反省はその後でも十分でしょ」
果南「……そっか。ありがとう、善子ちゃん」
善子「だからヨハネ、よ。じゃあね、私は帰るわ」
果南「うん。またね」ニコッ
善子「……ふん」スタスタ
善子「……は〜ぁ。本当に」
善子「らしくないこと、したものね……」
善子(でも。誰かとハグなんて、いつ以来なんだか……柔らかくて、温かい感触)
善子「まあ、たまにはいいか……///」
おしまい
これにておしまいです
見て頂いた方、レス頂いた方、ありがとうございました
お目汚し失礼しました