ウクライナの主力戦闘機「ミグ29」/(C)ロイター
ウクライナ東部の完全制圧に向け、軍事侵攻の“第2幕”が上がった。ロシア軍は東部2州を含むドンバス地方でウクライナ軍の防衛を突破しようと、攻勢を強めている。一方、ウクライナ軍は西側諸国の支援で戦闘機を増強。両国の争いは新局面を迎え、「空の戦い」へと拡大する可能性がある。
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米国防総省によると、ウクライナ軍が他国から軍用機の部品を受け取り、運用できる機体を数週間前と比べ、戦闘機を含め20機以上増やしたという。米国は戦闘機の供与に及び腰だが、少なくとも1カ国はウクライナに機体供与を検討しているとみられる。
「ウクライナが受け取ったのは、空軍が主力として使っている旧ソ連製の戦闘機『ミグ29』の部品ではないか。『ミグ29』についてはもともと、スロバキアが自国内で運用している機体を、ウクライナのゼレンスキー大統領の求めに応じて提供する考えを示していました。搭載武器はロシア仕様ですが、電子機器はNATO仕様です」(軍事ジャーナリスト・世良光弘氏)
スロバキアはNATO加盟国。戦闘機の供与を求めるウクライナに対し、米国などはロシアの反発を生むとして慎重姿勢を崩していないが、やや踏み込んだ格好だ。方針転換の理由は、ドンバス地方で予想される戦闘の激化である。
開けた土地での「戦車vs戦車」も激化
米戦争研究所(ISW)は19日に発表した戦況分析で、〈ロシア軍の軍事作戦は次のフェーズに移行〉〈比較的小規模な地上部隊を支援するために、大規模な空爆や砲撃を始めた〉などと指摘。〈ロシア軍は5月9日の対独戦勝記念日に向け、作戦遂行を急いでいる〉との見方を示した。
ロシア軍が空からの攻勢を強めようとしている中、西側諸国も指をくわえて見ているわけにはいかない。西側諸国の支援を受けるウクライナ軍が戦闘機を増強することで、局地的な地上戦だけでなく「空の戦い」にも発展しそうだ。
「ここ半月の間、NATO側が戦闘機などをいつウクライナに供与するのかが焦点になっています。今、ドンバス地方で本格化し始めた戦闘はいわば“前哨戦”。ドンバス地方は平原地帯なので、これからは戦車への奇襲を仕掛けられる市街戦ではなく、開けた土地での『戦車vs戦車』の地上戦が激化すると考えられます。地上戦をサポートするために、ロシア軍が『スホイ35』などの戦闘機を展開してくるのを見越し、NATO側も動いたのではないか。『スホイ35』も『ミグ29』も非ステルス戦闘機なので、地対空ミサイルで撃墜できなければ、戦闘機同士が急接近して機関砲で撃ち合うこともあり得ます」(世良光弘氏)
「空の戦い」を制した側が、終わりの見えなくなってきた戦争の雌雄を決するのか。
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