官邸主導で見切り発車=新在留資格、制度生煮え−国会審議に不透明感
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018110201154 外国人労働者の受け入れ拡大のため新たな在留資格を創設する出入国管理法改正案が国会に提出された。
単純労働の受け入れに道を開く歴史的な政策転換と言えるだけに与党内には慎重論もあったが、首相官邸が
主導する形で押し切った。ただ、政府は受け入れ人数の見込みすら示せないなど突貫工事で仕上げた経緯は
明らかで、来週にも始まる国会審議には不透明感も漂う。
外国人労働者の受け入れ拡大は本来、自民党保守派が慎重姿勢を取り続けてきた政策。保守派の代表格と
目される首相がその旗振り役を務めるようになったのは、このままでは政権の看板である経済政策「アベノミクス」
が腰砕けになるとの危機感からだ。
政府関係者によると、発端は菅義偉官房長官に地元から「人材難で介護施設を開けない」との訴えが寄せられた
ことだった。調べてみると、他業種の人手不足も判明。長官は首相に相談し、2人で来年4月の新制度スタートの
流れを固めた。準備作業が本格化したのは昨年夏ごろだ。
改正案を審査した自民党法務部会は結論ありきだった。先月22日の議論開始時点で、党は26日の了承を
目指す日程を早々に公表。出席者からなぜ急ぐのかただされると、法務省は「首相と官房長官から来年4月と
発言があった」と苦しい受け答えを余儀なくされた。
部会の審査終了は数日ずれ込んだものの、最終関門の総務会は政府の想定通り30日に了承。6月に閣議決定
された「骨太の方針」に新在留資格が書き込まれ、レールが敷かれていたことも慎重論者の勢いをそいだ。
「党はあっけなかったな」。政府高官は余裕の表情でこう語った。
そもそも、政府は「新在留資格は移民受け入れ政策ではないか」との根本的な疑問にも説得力のある答えを
示せていない。移民制度を「一定規模の外国人と家族を期限なく受け入れることで国家を維持する政策」と
位置付ける首相は2日の衆院予算委でも新制度について「移民政策ではない」と繰り返したが、自民党にも
「国際的に通用しない定義だ」と批判が出ている。
立憲や国民民主党は本来、外国人受け入れに前向きな意見が強い。ただ、両党を支持する連合は新在留資格
に否定的。