ウクライナ情勢を巡って米ニューヨークの国連本部で23日に開かれた国連総会の会合で、グテレス事務総長とロシアのネベンジャ国連大使が火花を散らした。グテレス氏は、安全保障問題で大国に対して「及び腰だ」との指摘もあったが、国家の領土保全や政治的独立を定める国連憲章の原則が揺らぐ事態になり、ロシアを公の場で非難。ロシアは不満を示しているが、孤立を深めている。
グテレス氏はこの日の演説で、「明確なことがある。(ウクライナ東部の2地域の『独立』を承認した)ロシアの決定とその後の動きは、ウクライナの領土保全と主権に対する侵害だ」と改めて表明。ウクライナ東部紛争の和平条件を定めた「ミンスク合意」について「集中治療室で、多くの生命維持装置のおかげで生き延びてきたが、(ロシアの決定で)それらの装置が外されてしまった」と指摘した。
グテレス氏は21日の声明で「(ロシアの決定は)国連憲章に反する」とロシアを事実上批判。翌22日には、ロシアが「平和維持」のために派遣するという軍について「ある国の軍が他国の領土に同意なく入れば、それは中立的な平和維持軍ではない」と一蹴した。ロシアはウクライナ東部でロシア語を話す住民へのジェノサイド(民族大虐殺)が起きていると主張しているが、それも明確に否定した。
非難を強めるグテレス氏に対し、ネベンジャ氏は23日の国連総会で「事務総長の声明は非常に残念だ。それは国連憲章に定められた彼の地位や権限に沿わない」と主張した。グテレス氏は「橋渡し役」としての国連の役割を強調しているが、ネベンジャ氏は「彼の言う『橋渡し役』とは何なのか、我々には理解できない」と不快感を表明した。
ただ、この日の会合では、日本を含む各国が相次いで非難を表明し、ロシアを擁護する国はほぼなかった。日本の石兼公博・国連大使は、ロシアの行動は「国際秩序への挑戦」だと指摘。「独立」の承認は「全く受け入れられない」と非難した。
米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は、ロシアに厳しい代償が待っていることを国際社会が示さねばならないと強調。「国連憲章の前文に『戦争の惨害から将来の世代を救うことを決意し』とある。今がまさにその瞬間だ。次世代を恐ろしい運命から救うことができる時だ」と述べた。【ニューヨーク隅俊之】
毎日新聞 2022/2/24 11:32(最終更新 2/24 11:47) 954文字
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