サッカーのオーストラリア代表チームの選手らが、来月20日開幕のワールドカップ(W杯)が開かれるカタールについて、人権を侵害していると批判する共同声明が27日、公表された。
出場チームからこうした動きが出たのは初めて。
声明はビデオメッセージで、キャプテンのマット・ライアン選手ら代表チームの16選手が登場。
カタールにおける移民労働者やLGBTQ+(性的少数者)の扱われ方を批判している。
カタールでは、同性愛は死刑になる可能性がある。人権団体は、同国における外国人労働者の処遇の悪さや死者の多さを問題視している。
選手らはビデオ声明で、移民労働者に関して「効果的な改善策」を要求。同性同士で関係をもつことを犯罪としないことも求めている。
そして、「これらはすべての人に与えられるべき基本的な権利であり、カタールにおける継続的な前進と、2022年FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップの終了の笛の後もずっと続くレガシーを確実にするものだ」としている。
選手らはまた、「これらの問題に取り組むのは簡単ではなく、私たちはすべての答えを持っているわけではない」と述べている。
さらに、雇用主がパスポートを取り上げて労働者を出国できなくする「カファラ」制度を廃止するなど、カタールはいくつかの改革を進めていると指摘。
ただ、それらは一貫性がなく不十分だとしている。
豪サッカー連盟も声明
オーストラリア・サッカー連盟も声明を発表。労働者やその家族がW杯で感じる「苦しみ」は「無視できない」とした。
あわせて、カタールのLGBTQ+に関する法律にも言及した。
同連盟は、「私たちの国で最も多文化的で多様性があり、包括的なスポーツにおいては、誰もが安心し、真の自分でいられるべきだと信じている」と表明。
「LGBTI+(性的少数者)のファンはカタールで安全に歓迎されると、カタールの首長とFIFAの会長が最高レベルで保証した。この開放性が大会後も続くことを望んでいる」とした。
一方、イギリスのジェイムズ・クレヴァリー外相は26日、カタールでW杯を観戦するイギリスの同性愛者のファンについて、「柔軟性と妥協」を示すべきだと発言し、批判を浴びた。
オーストラリアでは、アデレード・ユナイテッドのディフェンダー、ジョシュア・カヴァロ選手が男子トップリーグの現役選手として唯一、同性愛者であることを公表している。同選手は、オーストラリアU-20代表に選ばれている。
外国人労働者の問題
カタールでのW杯開催は、FIFAが2010年に発表して以来、大きな批判を招いてきた。理由の1つに、同国の外国人労働者をめぐる問題がある。
英紙ガーディアンは昨年2月、カタールがW杯開催国に決まって以降、インド、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、スリランカからの出稼ぎ労働者が計約6500人死亡していると伝えた。
この人数は、カタールにある各国大使館の統計に基づくものだった。
一方、カタール政府は、それらの死者が全員、W杯関連プロジェクトで働いていたわけではないとし、総数は誤解を招くと主張した。2014~2020年にW杯スタジアムの建設現場で死亡したのは37人で、そのうち「業務関連」で亡くなったのは3人に過ぎないとしている。
抗議の動きは他にも
W杯でオーストラリアと同じグループDのデンマークは、カタールにおける人権侵害に抗議するため、「トーンダウン」したユニホームを着用すると発表している。
同国代表のロゴやメーカーのロゴが見えにくいデザインになっている。
イングランドを含むヨーロッパの出場9カ国の選手たちは、カタールの同性愛に関する法律への抗議として、「One Love」と記された腕章を着用する予定。
https://www.bbc.com/japanese/63409233.amp