10月4日、岸田文雄首相は公設秘書で長男の翔太郎氏を首相秘書官に起用しました。その4日後、麻生太郎副総理が1978年に務めた日本青年会議所の会頭のポストに、麻生副総理の長男の将豊氏が就任することが決まりました。
これを受けてSNSでは、「政治が家業となって世襲が当たり前って、ちょっとおかしくない?」「世襲が蔓延る日本にはまったく希望が持てない」といった疑問・批判がわき起こっています。
ただ、日本には367万社の企業があり(2021年6月時点)、その多くが同族経営で、当たり前のように世襲が行われています。世襲は、政治の世界にもビジネスの世界にも共通する日本社会の特徴といえます。
近年、経営学の世界では、同族経営のメリットを前向きに評価する研究が増えています。政府も、経営者の高齢化を踏まえて、事業承継補助金などで中小企業の世襲を強力に支援しています。政府や経営学者は、同族経営・世襲を「良い」ことと考えています。
同族経営・世襲は「良い」ことでしょうか、「悪い」ことでしょうか。今回は、ビジネスにおける同族経営・世襲の良し悪しについて考えてみましょう。
■世襲の良し悪しは判断が難しい
■最大のメリットはぶれない経営
■公私混同と情実人事が横行
現在、数百万人の中小企業経営者が自分の能力にマッチしない経営者という仕事をしている可能性があります。そのあおりを受けて、数百万人の従業員が自分の能力よりも低い仕事をしているともいえます。これは、国家レベルでは、壮大な人材の無駄使いです。
政府はいま、少子化による労働力不足を受けて、転職を容易にして人的資源を最適配分するよう改革を急いでいます。その一方で、事業承継支援で人材の無駄遣いを促しているのは、矛盾した政策と言わざるを得ません。
政治家・経営学者は世襲を「良い」こと、国民は「悪い」ことと考えています。どちらが正しいのでしょうか。「良い点も悪い点もある」でお茶を濁すのではなく、しっかり議論を深めたいものです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ba01365fe72ab405d57babd442f90041382ab5dd