https://mainichi.jp/articles/20201030/ddm/041/060/109000c
宮田浩喜さん 87歳=「松橋事件」受刑後無罪
1985年に熊本県松橋(まつばせ)町(現宇城(うき)市)で男性が刺殺された「松橋事件」で、殺人罪などに問われて再審で無罪が確定した元受刑者の宮田浩喜(みやた・こうき)さんが29日午前2時59分、肺炎のため熊本市内の病院で死去した。87歳だった。認知症などで寝たきりの状態だった宮田さんは、同市内の高齢者施設で暮らしていた。
事件は85年1月8日に松橋町の民家で男性(当時59歳)の遺体が見つかり、その3日前に男性宅を訪れていた宮田さんが殺人容疑で逮捕、起訴された。1審・熊本地裁は86年12月に懲役13年を言い渡し、最高裁で確定。宮田さんは服役し、99年に仮出所した。
一方、宮田さんは1審の途中から否認に転じて無実を訴えたが、公判では認められなかった。服役中の刑務所で弁護士が面会した時も「やっていない」と一貫して訴えていた。
宮田さんが「(凶器の)小刀に巻き付けて使った後に燃やした」と自白したシャツ片を熊本地検で発見した弁護団は、確定判決の唯一の支えだった自白に矛盾があるなどとして2012年に熊本地裁に再審請求。4年後の16年6月に地裁が再審開始を決定し、高裁、最高裁も裁判のやり直しを認めた。そして19年3月、熊本地裁は宮田さんに無罪を言い渡した。
宮田さんは20年9月、違法捜査で長期間の身柄拘束を受けたとして国と県に約8500万円の国家賠償を求め熊本地裁に提訴したばかりだった。10月18日に入居している施設で誤嚥性(ごえんせい)肺炎を起こし、21日から熊本市内の病院に入院していた。